\(0\div0\)の値は何でしょうか。
いま、 \[ 0\div0=A \qquad (1) \] という\(A\)についての方程式(1)と、 \[ 0=0\times A \qquad (2) \] という\(A\)についての方程式(2)を考えましょう。
もしも、割り算を掛け算の逆演算として考えるなら、
ということになります。
ところが、 どんな数\(A\)に対しても、 \[ 0=0\times A \qquad (2) \] は成り立ちますから、 どんな数\(A\)に対しても、 \[ 0\div0=A \qquad (1) \] が成り立たなければ困るということになります。
したがって、割り算を掛け算の逆演算として考える限り、 もしも\(0\div0\)が何か値を持つならば、 その値は「どんな数でもいい」ということになり、 \(0 \div 0\)の値は何かひとつの数には定まりません。
そのため、 通常の数学では\(0\div0\)の値を定義していません。 \(0\div0\)は「値を考えるのが無意味な式」といえます。 \(0\div0\)の値は何かと問われたら「定義されていません」や「未定義です」というのが正しい答えです。
もしも、以上で述べた前提を考慮しないでもいいなら、 \(0\div0\)を好きなように「定義」すること自体は可能です。 たとえば、割り算を掛け算の逆演算とは見なさないことにして\(0\div0\)の値を適当な数に「定義」することや、 \(0\div0\)の答えは数ではない何かとして「定義」することは自由にできます。 しかし、そこから先の理論は(仮に理論ができたとしても)通常の数学とは異なるものです。